1997年4月
この春小学校に入学した子どもたちは、学校生活にもなれ、新しい友だちと元気に勉学に 励んでいることでしょう。
ランドセルの素材である人工皮革「クラリーノ」を製造しているクラレでは、「クラリーノ・ランドセル」を購入した全国の6千人(父親、または母親)を対象に、親が望む『将来、子どもに就いて欲しい職業』(一人につき一つの職業名を 回答)を調査しました。
その結果を過去4年の調査と比較しながら、現代の親たちが子どもに託す将来の職業像を以下にまとめました。
男の子のベスト3は「公務員」「スポーツ選手」「医者」の順で、この順位は5年間変化がありません。
女の子のベスト3は「教師」「看護婦」「保母」。昨年4位だった「教師」が1位に返り咲き、2位「看護婦」、3位「保母」という順位です。
少子化が進み、長男長女時代が本格化していますが、世の親は子どもに「安定」を望んでいるようです。
男の子に将来就いてもらいたい職業のトップは、5年連続「公務員」(19.2%)です。しかし、最近、何かと批判を受けている世評を反映してか、初めて20%台を切りました。
女の子の「公務員」(8.3%)は昨年同様4位ですが、男の子と違い比率をやや上げています。
景気の不透明感を反映してか、公務員は安定した職業として依然高い人気を保っています。
男児の第2位は5年連続「スポーツ選手」(12.9%)です。毎年10%台の支持を集め、依然として高い人気ですが、昨年(14.4%)より比率は若干下がっています。
その内訳を見ると「サッカー」が「野球」を逆転して5年目ですが、昨年当たりから「野球」の挽回が顕著で、Jリーグが始まった94年には「サッカー」(45.9%)、「野球」(7.8%)で、38ポイントもあった差が 4.6ポイントにも縮まってきました。相次ぐドーム球場の登場、イチロー、松井といったヤングヒーローや大リーグで活躍する野茂人気などに負うところが大きいようです。
他のスポーツはぐっと少なく「レーサー・ライダー」(2.8%)、「競輪・競艇」(2.1%)、「ゴルフ」(1.8%)などが続いています。
女児の「スポーツ選手」(1.4%)は17位で、昨年(1.3%)と同じランクです。プロとアマの垣根が低くなりつつあるせいか、種目の多様化が見られます。「ゴルフ」と「体操」(各9.5%)に次いで、「柔道」「テニス」「水泳」「野球」(各4.8%)などが挙がっています。
女児のトップになったのは、「教師」(15.1%)で、昨年4位からの返り咲きです。この中 には幼稚園の先生も含まれており、幼児から人を教え導く先生の人気が復活しました。
3年連続の2位は「看護婦」(14.1%)です。“白衣の天使”は依然として女児の人気職業です。
3位の「保母」(9.8%)は昨年1位でしたが、1年おきに上下動を繰り返しています。
「医者」は、男児で5年連続の3位(9.7%)、女児でも5位(6.4%)にランクされています。 勉強もさることながら、資格を取得するのも困難な職業のひとつですが、近い将来には「医師過剰時代」を迎えるといわれつつも、依然として高い人気を維持しています。
「会社員」に押されていた「エンジニア」が3年ぶりに4位(6.8%)にカムバックしました。若者の理系離れにも歯止めがかかるのでしょうか。
「エンジニア」は女児でも23位(1.0%)に初登場しています。
男児で昨年4位だった「会社員」(5.9%)は「エンジニア」に抜かれて5位と、ワンランク落ちています。
一方、女児の「会社員」はランクこそ10位(2.9%)ですが、昨年(11位、3.1%)より比率を下げています。日本独自の終身雇用制も見直されつつあり、浮沈の激しいビジネス界への就職はやや敬遠されているようです。
都市計画やビル・住宅などの設計に携わる「建築家・建築士」(3.6%)は7位と、昨年の9位から浮上しています。
女児でも一昨年から顔を出し、33位(0.4%)です。
再開発など、ビッグプロジェクトにアイディアを凝らせる夢のある職業と捉えているようです。
航空に携わる男児の「パイロット」(8位、3.1%)と女児の「スチュワーデス」(6位、4.8%)はいつもトップ10内にある人気職業です。
陸上交通機関の運転に携わる「運転士・運転手」(1.9%)は15位で、ランクはここ4年あまり 変化はありませんが、比率は徐々に上っています。
また、日本人が宇宙飛行士として活躍する姿を見て、男児に「宇宙飛行士」(21位 0.8%)を希望する親もいます。
終身雇用関係が崩れつつある現代ビジネス社会を見てか、「自営業」が注目されています。 男児では9位(2.8%)を確保。ここ5年間いつもトップ10内に入っています。工夫次第で 高収入も夢でなく、人員整理の憂き目を見ることもない「自営」は魅力ある職業のようです。
また、腕一本が勝負の「コック・板前」(10位、2.6%)や大工や左官などの「職人」(11位、2.3%)の人気も高くなっています。グルメ時代を反映して花板やコック長が注目される中、「コック・板前」は昨年の17位(1.2%)からの躍進です。
この傾向は、女児の「パン屋・ケーキ屋」(8位 3.6%)「花屋」(9位 2.9%)、「自営業」(27位 0.7%)、「ペットショップ」(35位、0.4%)などにも現れています。 女児における「パン屋・ケーキ屋」は 人気上昇中の職業で、男児(0.6%)でも25位に初登場しています。
手に職や技術を”という志向は女児にも強く、「ピアノ教師」(7位 4.2%)、「美容師」(11位 2.6%)、「薬剤師」(12位 2.5%)、「デザイナー」(14位 1.5%)などが安定した人気を得ています。
世界で類を見ない高齢化社会がすぐそこまで来ているのを反映して、「福祉関係」の職に就かせたいと希望する親が増えています。
男児(0.8%)では27位から20位、女児(1.2%)でも25位から19位へと急上昇しています。
これまで、浮き沈みの激しい芸能界に職を得させたいという親は男女ともそれほど多くなかったのですが、「芸能人・タレント」の比率は徐々に上っています。
今年は男児が17位(1.7%、96年1.6%、95年0.7%)、女児は13位(2.5%、96年2.2%、95年1.6%)にランクされています。