＜クラロン＞は耐アルカリ性に優れているので、電解液である高濃度の水酸化カリウムの強アルカリ性にも耐えられるのです。ほかの素材、例えばポリエステルでは溶けてしまってダメなんです。この強さは＜クラロン＞を構成するポバールの化学的な構造に由来していて、同様に、建築物用の繊維強化セメント（FRC）の補強用繊維として＜クラロン＞が使われているのは、耐アルカリ性という優れた性質をもっているからです。

電池内の亜鉛が勝手に反応すると、腐食がすすんで寿命を減らし、ときには電池内に発生したガスによって液漏れが生じてしまうこともあります。このような余計な反応を抑えるのが水銀なんですね。でも、環境への配慮から電池メーカーでは、「水銀を使わない電池」の開発が望まれていました。そんな中、（1）＜クラロン＞の細かい網目が生成物を高効率でセパレートし、（2）水銀に代わってほかの金属と亜鉛とを合金にすることで亜鉛の勝手な反応を抑えることができたことにより、水銀ゼロの電池が誕生したのです。