ガバナンス

取締役会のダイバーシティを推進し、多角的な視点から建設的な議論を重ね、さらなる企業価値向上に貢献していきます。

多角的な視点が、建設的な議論を活性化させる

当社グループは、自然環境・生活環境の向上に貢献する価値創造を通じたサステナブルな成長を目指しています。このビジョン実現に向け、迅速かつ適切な意思決定・業務執行に努めるとともに、経営の透明性・公正性、業務執行の有効性・効率性を監督するコーポレート・ガバナンス体制の整備・強化に継続的に取り組んでいます。
 当社では取締役の選任、報酬に係る議案などについて、取締役会の諮問を受けて検討する機関として、経営諮問委員会を設置しております。2024年3月からはこの委員会を、社外取締役4名と社外監査役1名に加え、社外有識者2名の7名で構成する体制とし、委員長は独立社外取締役である田中聡氏に務めていただくこととしました。今回の体制変更で、取締役の指名・報酬、後継者育成など経営の重要事項に関して、意思決定の透明性・公正性・客観性をさらに向上させ、これまで以上に客観的かつ中立的な視点からの諮問結果を取締役会に答申いただき、当社経営の一層のレベルアップにつなげていけるものと考えています。
 経営環境のめまぐるしい変化に対応して、取締役会の議題も年々多様化しています。より実効性の高い経営の実現に向けて、取締役会メンバーのさらなるダイバーシティの推進が課題です。取締役会においては、知識・経験・能力だけではなく、性別や国籍などの面を含む多様性から生まれる多角的な視点がグローバルな事業の推進、適切な監督・意思決定に資すると考えています。2024年には、新たに企業経営経験を有する三上直子取締役に当社の経営に加わっていただきました。当社取締役会の多様性は年々、着実に進化していると考えていますが、将来的には社内から女性をはじめ多様なキャリアを持った役員が生まれるように人材育成の強化と多様性を促進する人事施策が不可欠です。経営諮問委員会および取締役会においても、人材育成を経営の重要テーマの1つとして議論を重ねており、長期視点での経営幹部候補育成制度による人材プールの構築などを行っています。

取締役会の実効性を一層高め議論を深化させる

当社では、取締役会の実効性向上のため、2016年度より毎年1回、取締役会の実効性の評価・検証を行っています。2023年度の実効性評価においては、評価の独立性・客観性をより高める観点から、外部の眼を入れた評価を行うべく、第三者機関によるアンケートを実施し、集約結果を取締役会で分析・評価をしました。その結果、取締役会の構成、取締役会の運営、取締役会の議論、取締役・監査役に対する支援体制などのいずれの点においても、当社の取締役会はおおむね適切に機能しており、取締役会の実効性は確保されていることを確認しました。
 一方で、企業規模に対して事業数が多すぎる等の指摘もあったことから、事業の縮小・撤退を含めた事業ポートフォリオの高度化や、中長期的な経営戦略、資本コストを意識したROIC経営等についての議論の深化の必要性が課題として共有されました。
2024年度は5カ年の中期経営計画「PASSION 2026」の中間にあたり、最終年度となる2026年に向けて計画を見直す予定です。私は取締役会の議長として、取締役会メンバーを含めた経営層による「PASSION 2026」前半のレビューから課題を吸い上げ、最適な意思決定が行われるように一層審議を活発化させ、同時に議論の深化を図って、当社経営のスピードアップと企業価値向上に貢献していきたいと思います。

使命「世のため、人のため」を原点にガバナンスの向上に尽力し続ける

ステークホルダーの皆さまに長らくご心配おかけしておりました2018年5月に発生した米国子会社での火災事故にかかる民事訴訟については、係争中であったすべての原告との間で2023年4月に和解が成立し、本件訴訟は解決しました。これを受けて、当社では社外役員(独立役員)を中心とする事故検証委員会を設置し、本件事故の本質的な原因究明と再発防止策を取りまとめ、公表しました(米国エバール工場火災事故検証結果について)。当社の事業活動においては、「安全はすべての礎」という言葉を掲げ、安全こそがすべてに優先する事項だとしています。にもかかわらず、起こしてしまった本件事故から真摯に学び、その教訓を風化させることなく、グループ全体の安全管理体制・リスク管理体制の見直しと、さらなる強化を図ることが経営の使命だと考えています。本件事故の検証結果は当社グループ内で水平展開し、再発防止策を講じていきます。取締役会としてもその進捗状況をしっかり監督し、必要な助言・提言を行って、安全性向上の一翼を担ってまいります。
 安全はもちろんのこと、経営やガバナンスに終わりはありません。常にクラレの使命である「世のため、人のため」を原点としながら、世の中の変化にも臨機応変に対応して、持続的な成長を目指して努めてまいります。今後とも、ご理解、ご支援のほどよろしくお願いいたします。