使命である「世のため、人のため」を追求し、事業をしなやかに変革させながら社会に貢献し、幸せを届ける会社であり続けてほしい
厳しい外部の目を持って経営の品質向上に貢献する
コーポレート・ガバナンスは経営の品質管理と言い換えられます。どんな会社であっても「会社の常識が社会の非常識」になることは往々にしてあります。社外取締役の役割はそうした乖離が起こらないように第三者視点を持って経営を監督することだと考えます。
私自身いくつかの会社の経営に関わってきましたが、経営は複雑で難しい判断の連続です。当然、間違いや失敗が生じることもあります。ここで重要なのは、間違いや失敗を率直に認めて原因を究明し、次の正しい判断に至るプロセスを構築することです。取締役会議長である伊藤会長をはじめとした社内取締役の皆さんは、私たち社外取締役からの建設的な批判に真摯に向き合い、アクションプランを提示し実行する姿勢があります。その姿勢がクラレグループの経営の品質向上に大きく寄与していると評価しています。
課題は、新規事業の創出とダイバーシティのさらなる推進
今後、クラレグループがさらなる飛躍を遂げるためには、大きく二つの課題があります。
一つは新規事業の創出です。候補となる事業はいくつかありますが、まだ企業成長に貢献する収益源には至っていません。しかし過去を振り返ると、立ち上がりは困難であっても諦めず粘り強く取り組み、新規事業を主力事業へと進化させてきた歴史があります。「PASSION 2026」の最終年であり創立100周年でもある2026年には、具体的な成果を示されるよう期待をもって注目しています。
一方で、引き際を見極めることも重要です。すべての事業に対して粘り強く取り組んでいると、やがてポートフォリオは細分化され、成果を上げづらくなるでしょう。経営陣が適切なタイミングで事業撤退の判断を検討するべきです。その意思決定に関しては、社外取締役としても積極的に関与していきます。
二つ目は、ダイバーシティのさらなる推進です。クラレグループは海外事業を拡大し、外国人取締役が経営に参画していることから、国内企業としてはダイバーシティが一定レベルまで進んでいると評価しています。しかし、女性役員については社外取締役2名、社外監査役1名とまだまだ多くはありません。女性社員が活躍できる環境をしっかりと整え、女性管理職のクリティカル・マス※が形成され、次の世代のロールモデルが増えてくれば、これまで以上に女性が活躍できる企業へと進化していけると思います。将来的には社内から女性取締役が誕生することを期待しています。
また、クラレグループが真のグローバル企業を目指すうえで、人材の最適配置を加速化させるべきです。特に、国内から海外ばかりでなく海外から国内に優秀な人材を受け入れて、双方向の人材ローテーションを進めることで、グローバルで一体感を醸成しつつ多様性を促進するのです。それが人材の質を高め、選ばれ続ける企業として、持続的な成長につながります。
※集団の中で大多数でなくても存在を無視できない、発言権が確保できるグループになるための分岐点があり、それを超えたグループのこと
使命である「世のため、人のため」を礎に、成長を続けてほしい
クラレグループは合成繊維メーカーとして誕生しましたが、その後事業ポートフォリオを劇的に変化させてきました。現在のスペシャリティ化学企業になるとは当初は誰も想像していなかったでしょう。これは、先人たちがクラレグループの使命である「世のため、人のため」を忠実に守り、それを追求していく中で、しなやかに事業を変化させてきた結果です。今後も同じように変革し続けてほしいし、それが「クラレらしさ」であると考えます。今後もクラレにしかできない独自の事業を発展させ、社会に貢献し、ステークホルダーに幸せを届ける会社であり続けてほしいと思います。私も引き続き真剣勝負でサポートしていきます。