地球温暖化防止/TCFD提言への対応とインターナルカーボンプライシング
TCFD提言への対応
クラレグループは気候変動対策を当社の取り組むべき重要課題の一つとして捉え、2020年11月に気候関連財務情報開示タスクフォース (TCFD)※提言に賛同しました。また、2022年度を起点とするサステナビリティ中期計画では、気候変動の緩和策として温室効果ガス(GHG)の排出量削減と省エネルギーの促進、自然環境の向上に貢献する製品の拡大、サーキュラーエコノミーへの対応などを掲げました。これらの施策を着実に実行すると共に、TCFDが推奨するガバナンス、シナリオ分析に基づく戦略、リスク管理、指標と目標に基づく開示も段階的に充実していきます。
※金融安定理事会(FSB)により、気候関連の情報開示及び金融機関の対応をどのように行うかを検討するために設立された「気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」。
ガバナンス
クラレグループでは、社長を委員長とするサステナビリティ委員会がサステナビリティ活動を推進します。この委員会の傘下には、サステナビリティ中期計画で掲げたグローバル施策を実行するプロジェクトチームを配置し、各プロジェクトを推進します。また、気候変動に資する施策の進捗状況を確認した上で、TCFDに基づく開示を進める「TCFD推進プロジェクトチーム」も傘下に設置し、開示の充実を図ります。
サステナビリティ委員会での討議事項は取締役会に報告し、取締役会の意見をサステナビリティ活動の推進に反映します。
戦略
クラレグループは2021年度に、低炭素社会への移行において生じる事象、および気候変動により発生する物理的な事象に対するクラレグループのリスクと機会を下表1の通り選定しました。
表1 : クラレグループの気候変動によるリスクと機会
2022年度には、国際エネルギー機関(International Energy Agency;IEA)が発行しているWorld Energy Outlook等から、低炭素社会への移行が進む2℃以下シナリオ(含む.1.5℃シナリオ)および気候変動が進む4℃シナリオに基づくシナリオ分析を開始し、2023年度までにクラレグループ全体の主要なリスクおよび機会の事業インパクトの算定を完了しました。結果は下表2の通りです。
表2 :気候変動シナリオにおけるクラレグループの主要なリスクと機会の事業インパクト
2℃以下シナリオにおけるGHG排出およびエネルギー調達に対する炭素価格※の影響は大きく、2030年のGHG排出削減対策実施後にクラレグループで約320億円の炭素税賦課額が見込まれ、操業コストが増加する可能性が示されました。この対策として、2050年カーボンネットゼロに向けたGHG排出削減計画を着実に進めると同時に、環境貢献の高い製品が創出する市場価値を製品・サービス価格に反映していきます。
※World Energy Outlook 2022より先進国140ドル/トン-CO2、新興国25ドル/トン-CO2[2030年1.5℃シナリオ]にて計算
今後はシナリオ分析の結果から導き出された主要なインパクトへの対応を進めていくと同時に、環境変化に応じて適時に算定内容を見直して反映していきます。
リスク管理
クラレグループでは表2のリスクに対して、「緩和」と「適応」の両側面についてリスク管理を実施しています。
低炭素社会への移行リスクを「緩和」するため、GHG排出量削減や自然環境貢献製品の売上高拡大を進めています。これらの進捗はサステナビリティ委員会(委員長 : 社長)で確認を行なっています。
一方、気候変動に伴う物理リスクへの「適応」策については、災害対策・事業継続性の観点で各組織が毎年リスク自己評価を実施した結果を、リスク・コンプライアンス委員会(委員長 : サステナビリティ推進本部担当取締役)で討議し、対策が必要な場合は社長が経営リスクとして特定し責任者を指名して対策を進めています。
指標と目標
気候変動緩和の長期目標として、2030年にクラレグループでのGHG排出量(Scope1と2)を2019年度比30%削減、2050年にカーボンネットゼロを掲げました。また、サステナビリティ中期計画では気候変動に関わるGHG排出量削減および自然環境貢献製品の売上高向上目標を下表3の通りに設定しています。
表3: サステナビリティ中期計画の気候変動に関わる施策と目標
インターナルカーボンプライシング(ICP)制度
クラレグループは、ICP制度を導入することで、省エネルギー推進へのインセンティブ、 収益機会とリスクの特定や投資意思決定の指針として活用し、低炭素社会の実現を目指しています。
【クラレグループのICP制度】
社内炭素価格 | 10,000 円/トン-CO2 (※海外においては社内為替レートを用い換算) |
---|---|
運用開始 | 2022年1月から |
制度対象 | CO2の排出量増減を伴う設備投資 |
適用方法 | CO2排出量の増減を社内炭素価格の適用により費用換算し、投資判断のひとつの基準として運用 |