Planet

地球温暖化防止/GHG排出量と削減の取り組み

GHG排出量(Scope1&2)とクラレグループの取り組み

クラレグループの2023年度の総GHG排出量は、2022年度の2,896千トン-CO2から6.8%減少し、2,700千トン-CO2となりました。

国内クラレグループでは、2022年度の1,236千トン-CO2から2023年度は1,144千トン-CO2に減少しました。各事業における生産量の減少に伴うエネルギー使用量の減少が大きく影響しましたが、国内クラレグループの各生産拠点では、各製品の収率向上、原料・ユーティリティの回収利用、省エネ機器への更新、省エネ活動(ムダ取り活動)等のGHG排出削減に継続して取り組み、2023年度は17千トン-CO2の削減対策を実施しました。また、倉敷事業所では石炭燃料の自家発電設備を2022年に停止し、社外からの購入電力と小型貫流ボイラーによる蒸気に切り替えたことで、GHG排出量削減に寄与しました。

海外クラレグループの2023年度のGHG排出量は2022年度の1,660千トン-CO2から減少し、1,555千トン-CO2となりました(2023年度は60千トン-CO2相当の分離型エネルギー属性証明書を取得しており、このGHG排出量削減分を含みます)。海外クラレグループにおいても各生産拠点でGHG排出削減につながる省エネルギーや収率向上に継続して取り組んでいます。新たに稼働開始したタイの新プラントで生産量が増加しましたが、多くの海外関係会社で生産量が減少したことによりGHG排出量は減少しました。

サステナビリティ中期計画 Planet の目標として設定した、クラレグループのエネルギー使用量の売上高原単位の2023年度実績は、2019年比16.7%の低減(改善)となり、目標である「2026年度に5%以上の低減(改善)」を大きく上回りました。今後も引き続きGHG排出削減につながる省エネ活動などを通じて更なる原単位の改善に取り組みます。

クラレグループのGHG排出量は2014年度以降、ビニルアセテート事業、活性炭事業(カルゴンカーボン社)の買収などM&Aによる事業編入等の影響で、2019年度まで増加しました。特に、2018年のカルゴンカーボン社の買収の結果、クラレグループのGHG排出量は大きく増加しました。カルゴンカーボン社から排出されるGHGは、そのほとんどが製品である活性炭の製造プロセスで副生するCO2です。活性炭は原料となる石炭の一部を燃焼し表面に細孔を形成することで製造します。このとき、細孔形成のために除去される石炭表面の炭素はCO2として放出されます。このように活性炭は製造時に多くのCO2を排出しますが、一方で活性炭は工場の排ガス中の有害化学物質の吸着除去、工場排水や飲用水原水などの浄化に不可欠な製品として広く世の中で使われており、地球環境の改善、環境負荷の低減に大きく貢献しています。クラレグループでは、2030年までに800億円の設備投資を計画し、製造過程で副生するCO2の分離・回収、利用、貯蔵(CCUS)の技術確立に向けた検討、省エネ投資、電力の再エネ化にも引き続き取り組んでいく予定です。さらに、当社における大きなGHG排出源である自家発電設備の燃料転換の取り組みにおいては、グリーン水素やグリーンアンモニア技術などの将来技術の中から有効なものを見定めて活用していくことで、2050年までにカーボンネットゼロの達成を目指します。

<GHG排出量・エネルギー使用量(クラレグループ)>

2019 2020 2021 2022 2023
クラレ
グループ
(国内+海外)
GHG排出量(Scope1+Scope2) 千トン-CO2 3,231 3,045 3,020 2,896 2,700
Scope1排出量 千トン-CO2 2,060 2,045 1,973 1,877 1,748
Scope2排出量 千トン-CO2 1,170 1,000 1,047 1,020 952
エネルギー使用量 原油換算 千KL 1,089 1,002 1,075 1,065 1,059
エネルギー使用量の売上高原単位(2019年を100とした場合) 目標 2026年に2019年比5%以上の低減
実績 100 - - - 83.3
(16.7%低減)

<GHG排出量・エネルギー使用量(国内、海外)>

2019 2020 2021 2022 2023
国内
クラレ
グループ
GHG排出量(Scope1+Scope2) 千トン-CO2 1,310 1,229 1,340 1,236 1,144
Scope1排出量 千トン-CO2 1,121 1,067 1,163 1,047 970
Scope2排出量 千トン-CO2 189 162 177 189 174
エネルギー使用量 原油換算 千KL 452 422 452 430 394
海外
クラレ
グループ
GHG排出量(Scope1+Scope2) 千トン-CO2 1,921 1,816 1,680 1,660 1,555
Scope1排出量 千トン-CO2 939 978 810 830 778
Scope2排出量 千トン-CO2 981 838 870 830 777
エネルギー使用量 原油
換算
千KL
637 580 623 635 665

【ご注意】会計年度変更に伴い、本レポートにおける環境関連データはグラフも含め次の通りとなっています。

  • ・2013年度以前:4月-3月の12ヶ月実績
  • ・2014年度 :4月-12月の9ヶ月実績+2014年1月-3月実績(または推定値)(2013年度と重複しています)
  • ・2015年度以降:1月-12月の12ヶ月実績

GHG排出量(Scope3)

GHGプロトコルではGHG排出量をScope1、2、3の3つに区分しています。

・Scope1(直接排出量);
自社の事業所等で燃料などを燃焼させることで発生するGHG排出量
・Scope2(間接排出量);
他社から供給された電気、熱、蒸気など購入エネルギーに伴うGHG排出量
・Scope3(その他の間接排出量);
Scope1、2以外のサプライチェーン全体(原材料の調達から製品の廃棄まで)におけるGHG排出量

このうちScope1、2は事業者が算定し国に報告することが法で義務付けられており、クラレでも国に報告するとともに、クラレグループ全体のScope1、2排出量をクラレレポート、クラレウェブサイト等で公表しています。

一方、Scope1、2以外のサプライチェーン全体を考慮したGHG排出量であるScope3は、クラレの直接的な事業活動による排出量だけではなく、原材料の調達から製品の流通、使用、廃棄に至るライフサイクル全体の視点から排出量を把握するものです。この度、Scope3の算定範囲を国内からクラレグループ全体に拡大し、同時にカテゴリー1の算定方法を変更しました。カテゴリー1については、従来は主要原料のみの購入金額に、各原料部門に応じた金額単位の排出原単位(購入者価格ベース)を乗じて算定していましたが、対象品目を拡大し、かつ個々の品目ごとの排出原単位(重量ベース)を使用することにより算定確度を高めました。今後は特に排出量が大きいカテゴリー1に関して、サプライヤーと協働し排出量削減に向けた対話を進めていきます。

※GHGプロトコル(The Greenhouse Gas Protocol):世界資源研究所(World Resource Institute;WRI)と世界経済人会議(World Business Council for Sustainable Development;WBCSD)が中心になり、世界中の企業、NGO、政府機関等が参加して温室効果ガス/気候変動に関する国際スタンダードや関連ツールを開発するイニシアティブです。

[Scope3] サプライチェーン全体でのGHG排出量管理イメージ(対象:クラレグループ、2023年)
(図中の①から⑮はScope3のカテゴリーを示す)

<GHG排出量(Scope3)*1

カテゴリー 単位 2021年度 2022年度 2023年度
1.購入した製品・サービス*2 千トン-CO2 2,941 2,872 2,544
2.資本財 133 157 344
3.Scope1,2に含まれない燃料及びエネルギー関連活動 546 549 534
4.輸送、配送(上流) 264 284 250
5.事業から出る廃棄物 78 78 58
6.出張 1 2 2
7.雇用者の通勤 4 4 5
8.リース資産(上流) 対象のオフィス、電気製品、社用車の排出量はScope1,2に含めています。
9.輸送、配送(下流) クラレグループの製品は、多様な用途において主に中間製品として販売し、輸送、加工、およびその廃棄までの追跡と把握が困難であるため、排出量の合理的な算定が不可能であり、これらのカテゴリーを算定対象外としています。
10.販売した製品の加工
11.販売した製品の使用
12.販売した製品の廃棄
13.リース資産(下流) 他社にリースしている資産はないため、当社に該当しません。
14.フランチャイズ フランチャイズ制をとっていないため、当社に該当しません。
15.投資 有価証券報告書に記載の通り、投資目的での他社の株式保有は行っていません。
Scope3合計 千トン-CO2 3,967 3,946 3,737
  • *1 クラレグループの連結の範囲を対象とする(カバレッジ:100%)
  • *2 クラレグループ全体の総購買額上位80%を占める取引先から購入した製品・サービスの購入量に、それぞれの品目に関する排出原単位を乗じて算定対象のGHG排出量とし、比例計算により総購入量分の排出量を算定した。
    重量単位の排出原単位には「Managed LCA Content(GaBi)(Sphera社)」、重量単位の排出原単位による算定が困難であるごく一部の購入品については金額単位の排出原単位として環境省「サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベース」を用いた。

<Scope3のGHG排出量削減の取り組み例(製品輸送時の環境負荷低減)>

クラレでは製品をユーザーへ輸送する際の物流段階でのGHG排出量の低減に取り組んでいます。例えば、トラックでの輸送効率を改善するため、製品の保管場所(倉庫)を集約し、複数個所から出荷していた製品を1か所からの出荷として輸送単位を大ロット化することで、複数台のトラックで輸送していた製品をトレーラー1台に切り替える取り組み、トラック等の自動車から貨物列車、船など環境負荷の小さい輸送手段に転換する「モーダルシフト」の取り組みを継続しています。また、国が進める「ホワイト物流」推進運動に賛同し、2019年に自主行動宣言を提出しました。