当社は、このたび、低電圧でかつ封止なしでも安定に駆動する柔軟なポリマーアクチュエータ(*1)を開発しました。新開発したポリマーアクチュエータは、当社独自開発の新規高分子固体電解質を使用しており、低電圧駆動の代表的な研究例である水を媒体に用いるイオン導電性高分子型ポリマーアクチュエータ(*2)に比べ、空気中(封止なし)での駆動安定性が10倍以上向上します。
ポリマーアクチュエータは、モーターや油圧による駆動装置に無い大きなストロークが可能な点や軽量性、しなやかな動作などの点からいわゆる「人工筋肉」として注目を集めており、ベンチャー企業を中心に携帯電話用カメラレンズのオートフォーカス機構やカテーテルなどの医療機器などの用途で実用化に向けた動きが活発化してきています。
開発が進んでいるポリマーアクチュエータとしては、誘電性ポリマーを電極で挟んだ誘電型ポリマーアクチュエータとイオン交換樹脂-電極接合体のイオン導電性高分子型ポリマーアクチュエータ等が挙げられます。誘電型ポリマーアクチュエータ(*3)は空気中において安定動作しますが、駆動には非常に高い電圧を要し安全面での懸念があります。一方、イオン導電性高分子型ポリマーアクチュエータは、数V程度の電圧での駆動が可能ですが、イオン伝導の媒体である水が必要であり、空気中において使用する場合には厳密な封止が必要などの制約がありました。
今回の開発品は、当社独自のポリマー設計・合成技術、アロイ化技術により開発した新規高分子固体電解質と炭素材料設計技術を用いた柔軟な電極からなります。さらに、横浜国立大学 渡邉正義教授(*4)との共同開発によって従来のポリマーアクチュエータでは難しかった低電圧で駆動し、かつ空気中での安定動作が可能な新規なイオン導電性高分子型ポリマーアクチュエータを開発いたしました。
今回開発したアクチュエータは、ポリマーの特長である軽量性、柔軟性、各種方法による優れた成形性を活かし、小型モーターやマイクロポンプ(ダイアフラム型)、医療用具、ロボット用駆動源への応用が期待されています。
本開発のポリマーアクチュエータは、2007年4月18日(水)~20日(金)に幕張メッセにて開催される「TECHNO-FRONTIER 2007 第16回モーション・エンジニアリング展」で一般公開します。