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株式会社クラレ                  
代表取締役社長 川原 仁

昨年の世界経済は、先進国を中心にインフレの継続による需要への影響が続きました。米国とアジアは堅調でしたが、欧州や中国では景気の停滞が想定を超えて続くなど、全体としては緩やかに成長したものの力強さに欠ける状況でした。ウクライナ、中東での戦争や複数の地域での地政学的緊張、地球規模での温暖化、疫学的なリスクなど、直接、間接的に企業経営に影響を及ぼす課題への対応が重要であることも再認識させられました。
     また昨年は、多くの主要国で選挙が行われ、政権やトップの交代がありました。これに伴って政策の変更が行われるなど、今後の不確実性が高まることも予想されます。

    2025年もクラレグループの経営を取り巻く外部環境の不透明さは継続し、楽観が許されない状況ですが、私たちは様々な環境変化に柔軟に対応し、収益を確保しつつ成長を目指すことが肝要です。

    本年度は、五ヵ年の中期経営計画「PASSION 2026」の4年目となります。昨年実施した計画の進捗確認と状況変化の認識に応じて、最終目標に向けた重要課題への取り組みを加速しましょう。もしも変更すべき戦略や施策があれば躊躇なく設定しなおして、実行しましょう。
    各事業、本部およびグループ会社においては、当初の計画に対する進捗状況は様々ですが、共通して言えるのは、各組織・各事業体において資本効率を高め、経営資源を集中すべき分野により集中し、成長のスピードを上げる方策を継続して実行することの必要性です。
    「事業ポートフォリオ高度化」など幾つかの重要テーマを遂行するにあたっては、痛みを伴う改革を行わなければならないこともありますが、クラレグループの将来のあるべき姿に繋がる取り組みですので、前を向いて乗り越えていきましょう。
    また、AIを含むデジタル技術の進歩、生活様式の変化、環境問題への意識の高まりなどは、当社に新たなビジネス機会を多く生み出すはずです。機会を逃すことなく、そして従来のやり方や発想に縛られることなく、積極果敢に挑戦し、スピーディーな行動で新事業の創出、拡大につなげていきましょう。

「3つの挑戦」を自分事と捉えて具体的な活動に関心を持ち、積極的に参画する

「PASSION 2026」で掲げた「3つの挑戦」である、「機会としてのサステナビリティ」「ネットワーキングから始めるイノベーション」「人と組織のトランスフォーメーション」については引き続き全社規模での活動を充実させ、進めます。これらの課題への挑戦は、皆さんの協力により着実に広まり、内容が深まっていますが、意識変革を伴う活動を進めるには、ある程度の期間が必要です。短期間で出来ることは速やかに実行しつつ、中長期的な課題に対しては粘り強く取り組んでいかなければなりません。社員の皆さんがその必要性を理解し、時には忍耐強く、そして変革の手を緩めずに続けることをお願いします。全ての拠点、あらゆる組織において、皆さんが「3つの挑戦」を自分事と捉えて具体的な活動に関心を持ち、積極的に参画していただきたいと思います。
    ところで、近年は企業の人権侵害に対して、ステークホルダーから厳しい目が向けられています。クラレグループにおいては既に「私たちの誓約」「コンプライアンスハンドブック」で企業理念や活動方針などを示してきましたが、昨年「クラレグループ人権方針」を策定し、人権に対する姿勢や取り組みをより明確に示しました。この方針では、事業活動における人権侵害に関するリスクを評価し、対策を講じ、結果を検証し、公表するという一連のPDCAプロセスを通じて、人権尊重が日々の事業活動の中で自然と根付いていくことを目指しています。本年度は人権アンケートをはじめとする具体的な取り組みを実施する予定ですので、皆さんのご理解とご協力をお願いします。

安全に対して深く考え、感性を磨き、仕事に取り組むことで、「安全で、安心して働ける会社」を築く

さて、当社は2018年に発生したクラレアメリカのエバール工場火災事故の検証結果を踏まえた総括を実施し、昨年度からの取り組みとして、事故に至った原因の理解と再発防止のための施策をグループ内で共有し、このような重大事案が再び起こらないようにするための活動をグローバルに推進しています。事故の直接・表層的な原因に留まらず、組織文化を含む本質的な背景を深く理解し、他の事案にも共通するであろう課題に対しての対応が必要です。改めて、世界中の生産拠点、研究開発拠点、事業所において、全ての社員が『安全はすべての礎』であることを強く意識し、私たち一人ひとりが安全に対して深く考え、感性を磨き、仕事に取り組むことで、「安全で、安心して働ける会社」を築きたいと考えます。皆さんのご協力と真摯な取り組みをお願いします。

    最後になりますが、私は、クラレグループの一人ひとりが社会人・企業人としてのしっかりとした倫理観と責任意識を持ち、主体性を持って仕事をすることで自分自身が成長し、その集合体としての会社も社会的価値を生み出しながら進化し続けるという好循環を思い描いています。そして、社員全員が失敗を恐れずに挑戦する前向きな姿勢と行動力を持つことで、クラレグループが活力と創造力のある元気な企業体であり続け、様々な場面でイノベーションや変革に繋がるアイデアが生み出されて実現し、大きな成功に繋がることを期待します。今年も、全員が一丸となって、クラレグループをより強く、より輝かしい未来へと導いていきましょう

世界中のクラレグループの皆さんとご家族の方々にとって、本年が健康で幸多い年となりますようお祈りしまして、私の挨拶といたします。

代表取締役社長 川原 仁

※こちらは、2025年1月6日に、クラレグループ社員向けに行われた年頭挨拶です。