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株式会社クラレ
クラレトレーディング株式会社

<エルモザ>の技術について

1. 開発コンセプト

(1) ヌバック調の表面感と質感
ヌバックの品質を極細微起毛織物で実現
(2) 高発色性
深い黒色を含む極濃色を極細繊維で実現
(3) エコフレンドリー
減量廃液の微生物処理が可能

2. 技術内容

(1) ヌバック調の表面感と質感

「従来品」イメージ 写真-1:従来アルカリ減量
極細繊維による起毛商品

「エルモザ」イメージ 写真-2:<エルモザ>

天然皮革を観察すると、その表層を構成する極細繊維は、その1本1本が独立しており、単糸間には微細な隙間が存在する。天然皮革の表面を微起毛したヌバックは、起毛された極細繊維と、その基盤部分にある微細な隙間を有する構造により、独特の表面感・質感を実現している。
従来のアルカリ減量タイプ極細糸は、海島構造の海成分をアルカリ溶解することにより、極細の島成分が発現する仕組みである。この場合、極細繊維は緻密に重なり合い、起毛をかけたとしても、その一部は起毛されないまま、緻密な集束状態で残り、生地としての質感は天然皮革ヌバックに及ばない。(写真-1)
これに対し<エルモザ>は水溶性樹脂<エクセバール>を海成分とする海島型複合繊維を採用し、極細繊維間に微小な隙間を生じる位相差捲縮構造を有している。これは、<エクセバール>が熱水溶解前に膨潤収縮し、内部島成分のポリエステルに圧縮ひずみが付与され、表面より<エクセバール>が溶解するにつれて、内部の島成分の圧縮ひずみが開放されて単糸がはじける。極細単糸は、1本1本別々にはじけるため、生じる微捲縮の位相がそろうことなく、極細単糸間に微細な隙間が生じ、位相差微捲縮構造となる。この構造により、<エルモザ>特有のヌバック調の表面感、質感を実現している。(写真-2)

(2) 高発色性

一般に、極細繊維の発色性が低いのは、通常の染・顔料で着色してもその表面積がレギュラー糸と比較して広く、反射効率が高いことによる。さらに、従来極細繊維は位相が揃い易く、さらなる表面反射のため、より白っぽく見えることが挙げられる。
これに対し<エルモザ>は、前述の位相差微捲縮構造により極細単糸の位相がそろっていない。これにより、繊維構造表面での反射が抑えられ、光はその内部にまで入射し、構造内部にまで入射した光は内部で有効に吸収され、濃色効果を発現する。
さらに<エルモザ>の原料である、<エクセバール>を用いた海島型複合繊維の島成分には、特殊変性を施したポリエステルを用いている。このポリマー組成と高速紡糸手法の組み合わせにより結晶構造を制御し、高レベルの染着量が達成出来るよう設計されている。

(3) エコフレンドリー

従来のアルカリ減量による極細繊維では、アルカリ減量廃液に問題がある。この廃液中には高濃度アルカリと解重合したポリエステルのみならず、重合触媒であるアンチモン系の重金属も含まれ、完全処理には高コストを必要としているのが現状である。このため、特に欧米ではアルカリ減量工程は厳しく規制されている。
これに対し、<エルモザ>の製造工程では<エクセバール>を溶解し極細繊維とするが、<エクセバール>は生分解性を有するため、その溶解廃液は活性汚泥処理などの微生物処理が可能である。また、溶解した<エクセバール>中には重金属を一切含んでいない。これらのことを総合し、<エルモザ>はエコフレンドリーな工程で生産できる素材といえる。

多孔中空タイプと海島タイプについて

原糸タイプ 素材比率/糸種 特長
<エアーミント>
多孔中空(レンコン)型
「エクセバール」イメージ
<エクセバール>
素材比率
PET/<エクセバール>
=60/40
=80/20
糸種
56dtx/24F
84dtx/24F
167dtx/48F
  • 中空率40%(見かけ比重0.83)による超軽量性
  • つぶれにくいハニカム構造
  • スケ防止機能
  • 遮熱効果
    (夏:遮熱効果 冬:保温効果)
<マイクロミントUS>
海島型
「エクセバール」イメージ
<エクセバール>
素材比率
PET/<エクセバール>
=60/40
糸種
56dtx/24F
84dtx/24F
  • <エクセバール>の溶解時の収縮挙動を利用し、極細単糸間にて内部構造捲縮が発現し膨らみが向上
  • 高発色マイクロファイバー(0.03dtx)