地球温暖化防止/GHG排出量と削減の取り組み
GHG排出量(Scope1&2)とクラレグループの取り組み
クラレグループの2022年度の総GHG排出量は、2021年度の3,020千トン-CO2からさらに4.1%減少し、2,896千トン-CO2(2019年※対比では10.4%減)となりました。
※クラレグループのサステナビリティ中期計画PlanetにおけるGHG排出削減の基準年
国内クラレグループの2022年度のGHG排出量は2021年度の1,340千トン-CO2から1,236千トン-CO2に減少しました。国内クラレグループ各生産拠点では、GHG排出削減対策として、各製品の収率向上、原料・ユーティリティの回収利用、省エネ機器への更新、省エネ活動(ムダ取り活動)等に継続して取り組み、2022年度は21千トン-CO2の削減対策を実施しました。また、倉敷事業所では自家発電設備を2022年に停止し、社外からの購入電力と小型貫流ボイラーによる蒸気に切り替えたことにより、GHG排出量が大きく減少しました。
海外クラレグループの2022年度のGHG排出量は2021年度の1,680千トン-CO2からわずかに減少し、1,660千トン-CO2となりました(2022年度は66千トン-CO2相当の分離型エネルギー属性証明書を取得しており、このGHG排出量削減分を含みます)。海外クラレグループでは生産量の増加にともないエネルギー使用量が増えた拠点もありましたが、各拠点において省エネルギーや収率向上等に取り組んだことに加え、一部の生産拠点における設備トラブル等により一時的に生産停止を余儀なくされた影響もあり、全体では前年並みのGHG排出量となりました。
サステナビリティ中期計画 Planet の環境負荷低減目標として設定した、クラレグループのエネルギー使用量の売上高原単位は、2019年比17.2%の低減(改善)となり、目標である2026年度に5%以上の低減(改善)を大きく上回りました。今後も引き続きGHG排出削減につながる省エネ活動などを通じて更なる原単位の改善に取り組みます。
クラレグループのGHG排出量は2014年度以降、ビニルアセテート事業、活性炭事業(カルゴンカーボン社)の買収などM&Aによる事業編入等の影響で、2019年度まで増加しました。特に、2018年のカルゴンカーボン社の買収の結果、クラレグループのGHG排出量は大きく増加しました。カルゴンカーボン社から排出されるGHGは、そのほとんどが製品である活性炭の製造プロセスで副生するCO2です。活性炭は原料となる石炭の一部を燃焼させ表面に細孔を形成することで製造します。このとき、細孔形成のために除去される石炭表面の炭素はCO2として放出されます。このように活性炭は製造時に多くのCO2を排出しますが、一方で活性炭は工場の排ガス中の有害化学物質の吸着除去、工場排水や飲用水原水などの浄化に不可欠な製品として広く使われており、地球環境の改善、環境負荷の低減に大きく貢献しています。クラレグループでは、2030年までに800億円の設備投資を計画し、製造過程で副生するCO2の分離・回収、利用、貯蔵(CCUS)の技術確立に向けた検討、省エネ投資、電力の再エネ化にも引き続き取り組んでいく予定です。さらに、当社における大きなGHG排出源である自家発電設備の燃料転換の取り組みにおいては、グリーン水素やグリーンアンモニア技術などの将来技術の中から有効なものを見定めて活用していくことで、2050年までにカーボンネットゼロの達成を目指します。
<GHG排出量・エネルギー使用量(クラレグループ)>
2018 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | |||
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クラレ グループ (国内+海外) |
GHG排出量(Scope1+Scope2) | 千トン-CO2 | 3,188 | 3,231 | 3,045 | 3,020 | 2,896 |
Scope1排出量 | 千トン-CO2 | 2,000 | 2,060 | 2,045 | 1,973 | 1,877 | |
Scope2排出量 | 千トン-CO2 | 1,188 | 1,170 | 1,000 | 1,047 | 1,020 | |
エネルギー使用量 | 原油換算 千KL | 1,077 | 1,089 | 1,002 | 1,075 | 1,065 | |
エネルギー使用量の売上高原単位(2019年を100とした場合) | 目標 | 2026年に2019年比5%以上の低減 | |||||
実績 | - | 100 | - | - | 82.8 (17.2%低減) |
<GHG排出量・エネルギー使用量(国内、海外)>
2018 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|
国内 クラレ グループ |
GHG排出量(Scope1+Scope2) | 千トン-CO2 | 1,320 | 1,310 | 1,229 | 1,340 | 1,236 |
Scope1排出量 | 千トン-CO2 | 1,138 | 1,121 | 1,067 | 1,163 | 1,047 | |
Scope2排出量 | 千トン-CO2 | 182 | 189 | 162 | 177 | 189 | |
エネルギー使用量 | 原油換算 千KL | 455 | 452 | 422 | 452 | 430 | |
海外 クラレ グループ |
GHG排出量(Scope1+Scope2) | 千トン-CO2 | 1,868 | 1,921 | 1,816 | 1,680 | 1,660 |
Scope1排出量 | 千トン-CO2 | 862 | 939 | 978 | 810 | 830 | |
Scope2排出量 | 千トン-CO2 | 1,006 | 981 | 838 | 870 | 830 | |
エネルギー使用量 | 原油 換算 千KL |
622 | 637 | 580 | 623 | 635 |
【ご注意】会計年度変更に伴い、本レポートにおける環境関連データはグラフも含め次の通りとなっています。
- ・2013年度以前:4月-3月の12ヶ月実績
- ・2014年度 :4月-12月の9ヶ月実績+2014年1月-3月実績(または推定値)(2013年度と重複しています)
- ・2015年度以降:1月-12月の12ヶ月実績
GHG排出量(Scope3)
GHGプロトコル※ではGHG排出量をScope1、2、3の3つに区分しています。
- ・Scope1(直接排出量);
- 自社の事業所等で燃料などを燃焼させることで発生するGHG排出量
- ・Scope2(間接排出量);
- 他社から供給された電気、熱、蒸気など購入エネルギーに伴うGHG排出量
- ・Scope3(その他の間接排出量);
- Scope1、2以外のサプライチェーン全体(原材料の調達から製品の廃棄まで)におけるGHG排出量
このうちScope1、2は事業者が算定し国に報告することが法で義務付けられており、クラレでも国に報告するとともに、クラレグループ全体のScope1、2排出量をクラレレポート、クラレHP等で公表しています。
一方、Scope1、2以外のサプライチェーン全体を考慮したGHG排出量であるScope3の算定は、クラレの直接的な事業活動による排出量だけではなく、原材料の調達から製品の流通、使用、廃棄に至るライフサイクル全体の視点から排出量を把握するもので、2013年度から国内クラレの一部のカテゴリを対象に算定し、公表しています。サステナビリティ中期計画 Planet では、算定対象を国内だけでなく、クラレグループ全体に拡大すると同時に算定精度も高め、Scope3排出量の2/3を占めるカテゴリを特定していきます。
2022年度はScope3の全15カテゴリのうち、当社非該当、あるいは、算定範囲が当社製品群のごく一部のため公表対象外としたカテゴリを除き、排出量が比較的大きい5カテゴリ(下図の①~⑤)について算定しました。また、クラレグループ製品のライフサイクル評価による環境貢献の定量化も継続して進めています。
※GHGプロトコル(The Greenhouse Gas Protocol):世界資源研究所(World Resource Institute;WRI)と世界経済人会議(World Business Council for Sustainable Development;WBCSD)が中心になり、世界中の企業、NGO、政府機関等が参加して温室効果ガス/気候変動に関する国際スタンダードや関連ツールを開発するイニシアティブです。
[Scope3] サプライチェーン全体での温室効果ガス排出量管理イメージ(対象:国内クラレ)
(図中の①から⑮はScope3のカテゴリを示す)
<GHG排出量(Scope3)*1>
2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | ||
---|---|---|---|---|---|---|
上流 | 購入した製品・サービス*2 | 684 | 598 | 388 | 563 | 722 |
資本財 | 121 | 170 | 108 | 91 | 98 | |
Scope1,2に含まれない燃料及びエネルギー関連活動 | 130 | 140 | 130 | 153 | 148 | |
輸送、配送(上流) | 12 | 12 | 10 | 12 | 12 | |
事業から出る廃棄物 | 24 | 27 | 26 | 23 | 22 | |
出張 | 算定していません | |||||
雇用者の通勤 | ||||||
リース資産(上流)*3 | ||||||
下流 | 輸送、配送(下流) | |||||
販売した製品の加工 | 算定した範囲が当社製品群のごく一部のため、 数値は公表していません |
|||||
販売した製品の使用 | ||||||
販売した製品の廃棄 | ||||||
リース資産(下流)*4 | *4,5,6 当社に該当しません | |||||
フランチャイズ*5 | ||||||
投資*6 | ||||||
その他 *7 | 算定していません | |||||
合計 | 971 | 946 | 662 | 843 | 1,002 |
- *1 国内クラレを対象とする(カバレッジ:40%)
- *2 国内クラレが調達した主要原料57品目の購入金額に、各原料の金額ベースの排出係数(購入者価格ベース)を乗じて算定している
2022年度は原料価格上昇のため、購入者価格ベースでの算定上、排出量が増加している。 - *3 リースを受けているものはオフィス、電気製品、社用車があるが、これらはScope1,2で算定している
- *4 他社にリースしている資産はないため、非該当
- *5 フランチャイズ制をとっていないため非該当
- *6 有価証券報告書にも記載の通り、投資目的での他社の株式保有は行っていない
- *7 企業活動に間接的に関係するカテゴリ1からカテゴリ15の範囲に含まれない任意の排出カテゴリ
<Scope3のGHG排出量削減の取り組み例(製品輸送時の環境負荷低減)>
クラレでは製品をユーザーへ輸送する際の物流段階でのGHG排出量の低減に取り組んでいます。例えば、トラックでの輸送効率を改善するため、製品の保管場所(倉庫)を集約し、複数個所から出荷していた製品を1か所からの出荷として輸送単位を大ロット化することで、複数台のトラックで輸送していた製品をトレーラー1台に切り替える取り組み、トラック等の自動車から貨物列車、船など環境負荷の小さい輸送手段に転換する「モーダルシフト」の取り組みを継続しています。また、国が進める「ホワイト物流」推進運動に賛同し、2019年に自主行動宣言を提出しました。