サプライチェーン・マネジメント
≪サステナブル調達方針≫
クラレグループは、多様な社会との接点において遵守すべき事項を【私たちの誓約】として、またこれを企業活動の中で具体的に実践するためのガイドラインを「行動規範」として定め、よき企業市民としての責任を全うすることを心がけています。
その一環として、クラレグループでは、企業・人・地球の持続可能性の鍵となる国際的な普遍的原則である「国連グローバル・コンパクトの10原則」に基づき、2005年に「CSR調達方針」を策定しました。
今回、サプライチェーン全体を通した人権尊重、環境保全、コンプライアンス重視、ダイバーシティ促進等のサステナブル調達を一層推進するため、「CSR調達方針」を「サステナブル調達方針」として改定し、同時に当社のグローバル調達ポリシーと位置付けます。
グローバル視点でのサプライチェーン全体に対して求められる責任を果たすためには、お取引先との協働が不可欠です。弊社のみならず、お取引先にもその取り組みを励行していただき、サプライチェーン全体を通してサステナブル調達を推進することを、弊社の購買取引の基本とします。
当社は国連グローバル・コンパクトに賛同し署名しています
サステナブル調達方針
1.コーポレート・ガバナンス
企業の社会的責任を自覚し、事業を通じて、人・社会・地球環境の調和を図り、よりよい関係の構築・維持に努めます。いつ、いかなる局面にあっても、法令や規則を遵守し、常に公正かつ誠実に企業活動を行います。
- サステナビリティ推進体制の構築
- 事業継続計画(BCP)体制の構築、安定した供給の確保への取組
- 内部通達制度の構築
- ステークホルダーへの情報発信・説明責任
- コンプライアンスの徹底
2.人権の尊重
事業活動に関わる全ての人の人権を擁護し、一人ひとりの尊厳と価値を尊重します。
- 人権・人格の尊重と差別の禁止、人権デュー・ディリジェンスへの取組
- 人権侵害の加担回避
- 強制労働・児童労働の禁止
- 結社の自由
- ダイバーシティへの取組
3.安全で働きやすい職場環境
労働安全衛生関連法令を遵守し、事業活動の関わる全ての人にとって安全で働きやすい職場環境の維持向上に努めます。また、社員の多様性を尊重し、性別、国籍、人種などを理由とした差別をすることなく、公正に処遇します。
- 労働安全衛生についての適切な管理
- 従業員の健康管理
- 適切な賃金の支払い
- 適切な労働時間の管理
- 雇用・評価・配置等における平等な機会提供
- ハラスメントの防止
4.環境保全の推進
環境と調和した事業活動を通じて、環境負荷やリスクの低減及び生態系を含む環境保全に努めます。社会の持続的な発展に貢献し、次世代への責任を果たしていきます。
- 環境に関する法規制の遵守、環境保全への取り組み(ISO14001等)
- 化学物質の適正な管理
- 環境負荷低減
- 資源の有効利用(エネルギー、水、原材料等)
- 廃棄物の適切な管理および削減
- 生物多様性への取組
5.公正な企業活動
公正・誠実に企業活動を行い、賄賂を含むあらゆる形態の不正に関与せず、市場での健全な競争を通じて、自由、公正、透明な取引を実施します。
- 独占禁止法/競争法の遵守、下請法の遵守(優越的地位の乱用禁止)
- 不正競争の禁止
- 贈収賄の防止
- 反社会的勢力との関係拒絶
- 知的財産の保護、第三者の知的財産の無断使用防止
- インサイダー取引の禁止
- 利益相反小売りの禁止
- 適切な輸出入管理
6.商品・サービスの安全性と品質
安全で信頼でき、高い品質の商品・サービスの供給を通じて、社会に貢献することを目指します。
- 安全性・品質に関する取り組み(ISO9001等)
- 不具合発生時の適切な対応(情報開示、顧客への通知)
7.機密情報の適切な管理
トレードシークレット、ノウハウ、顧客情報等の機密情報は、会社の重要な資産であることを認識し、適切に使用・管理します。また、第三者により開示を受けた機密情報も尊重し、同様に管理します。
- 情報セキュリティの徹底
- コンピューター・ネットワークへの攻撃に対する防御
- 個人情報の保護
- 機密情報の不正利用防止
8.サプライチェーン
サプライチェーン全体を通じて社会的責任を果たすべく、取引先に対しても持続可能な調達の意義を周知し、その浸透に努めます。
- サプライチェーンにおけるサステナビリティの推進
- 戦争や犯罪への関与のない原材料の使用(紛争鉱物)
9.社会貢献の推進
企業市民としての役割を自覚し、社会との積極的な交流や社会への貢献活動を行います。
- 持続可能な発展に向けた地域・社会との取り組み
≪取引先の評価≫
①サステナブル調達アンケート
クラレグループは、「サプライチェーン・マネジメントの向上」をマテリアリティの一つとして位置付け、サプライチェーンにおける「サステナブル調達方針」の遵守および履行の徹底を目ざしています。その取り組みを確実なものとするため、取引先に対して「サステナブル調達アンケート」を行い、取引先での取り組み状況を確認しています。具体的には、取引先への「サステナブル調達方針の浸透」→「サステナブル調達アンケート実施」→「アンケート結果の解析・評価」→「フィードバック、(必要に応じ)改善支援」のサイクルを運用することで、定期的なモニタリングを行い、リスクを低減し、持続可能な調達の実現を目指しています。また、この活動の中で、特に積極的な改善支援が必要と判断した取引先に対しては、コミュニケーションを取りながら教育・改善指導を行います。さらに、取引先における活動や改善状況をもとに、取引先への監査の必要性や頻度を見極めることにしています。
この取り組みの第一歩として、2020年に購買・物流本部が所管する主要取引先1)を対象にCSR調達に関するアンケート(現サステナブル調達アンケート)を実施し、2022年には、調査対象を国内各事業部・関連会社が独自に購買している取引先に拡大して実施しました。そして、本取り組みを海外拠点の取引先にも実施すべく体制構築を図り、2023年には、海外を含むクラレグループ全体の総購買額80%を占める取引先を抽出し、対象となった各海外拠点の取引先にアンケートを実施しています。
- 1)総購買金額の80%(原材料等については購買額の90%)をカバーする取引先
本アンケートは、クラレグループの「行動規範」および国連グローバル・コンパクトの10原則を反映し、人権の尊重、性別・国籍などを含む差別の禁止、児童労働の禁止、水問題、地球温暖化対策、環境汚染対策、賄賂、汚職などの防止など公正な企業活動、品質の確保、情報セキュリティ、サプライチェーンへの配慮、地域社会との共生等、9分野51項目から構成しています。
サステナブル調達アンケート
サステナブル調達方針項目
アンケート項目
1.コーポレート・ガバナンス
- サステナビリティ推進体制の構築
- サステナビリティアセスメント
- 事業継続計画(BCP)体制の構築
- 内部通報制度の構築
- 外部への情報発信・説明責任
2.人権の尊重
- 人権に対する基本方針
- 人権の尊重と差別の禁止
- 強制労働の禁止
- 児童労働の禁止
- 結社の自由
- 女性幹部の比率
- 従業員の研修
- 従業員との対話
3.安全で働きやすい職場環境
- 人材育成の機会
- 適正な賃金の支払い
- 労働時間、休暇の公正な適用
- ハラスメントの禁止
- 従業員の安全衛生管理
- 下請け業者の安全衛生管理
- 従業員の健康管理
4.環境保全の推進
- 環境への取組み
- ISO14001等の認証取得
- 化学物質の管理
- 危険物の輸送
- 排水、汚泥、排気の管理
- 資源(エネルギー、水、原材料等)の持続可能で効率的な利用
- GHG(温室効果ガス)の排出量削減
- NOx、SOx、VOCの排出量の公表
- 廃棄物の責任ある廃棄
5.公正な企業活動
- 独占禁止法/競争法の遵守
- 不正競争の禁止
- 現地行政や公務員との適切な関係の維持
- 顧客や取引先等との不適切な利益の授受の防止
- 反社会的勢力、団体との関係排除
- 知的財産の無断使用、著作権の違法複製禁止
- インサイダー取引の禁止
- 利益相反行為の禁止
- 罰金、訴訟
- 輸出入貿易管理
6.商品・サービスの安全性と品質
- 品質・安全性に対する方針
- 品質・安全性の確保
- 事故、不良品流通時の適切な対応
7.機密情報の適切な管理
- 情報セキュリティの徹底
- コンピュータ・ネットワークへの攻撃に対する防御
- 個人データおよびプライバシー保護
- 機密情報の不正利用防止
8.サプライチェーン
- サプライチェーンにおけるサステナビリティの推進
- 紛争鉱物
9.社会貢献の推進
- 負の影響を減らす取組み
- 持続可能な発展に向けた地域社会との取組み
- 社会貢献の推進
各項目について、体制の有無や是正・確認の有無の状況を選択肢で回答(各アンケート項目の質問につき、3点、2点、1点、0点の4段階で点数付けを行う)
2022-2023年CSR調達アンケート結果解析
アンケート回答率
アンケート依頼社数 | 回答率 | |
日本 | 335社 | 98.5% |
海外 | 304社 | 85.5%* |
*2023年末現在。取引先にて作成の情報開示レポートを本アンケート回答の代用とした取引先を含む
評価基準
評価 | 得点率 |
A | 80%以上 |
B | 66%~80%以上 |
C | 50%~66% |
D | 50%未満 |
日本国内では2020年にアンケートを開始し、2022年は335社に対しCSR調査アンケート調査を実施しました。また、2023年には海外拠点における取引先304社に対して、同様にCSR調達方針(現サステナブル調達方針)の浸透とCSR調査アンケート調査を開始し上記の回答率を得ました。アンケートの内容・質の向上のため、国内では2022年に設問内容や表現の見直しを行い、設問に補足説明の追加やCSR調達方針に定める各項目の具体的な取り組み事項として「CSR調達ガイドライン(現サステナブル調達ガイドライン)」を作成し、アンケートと合わせて取引先へ提示しています。今後も適宜に、より回答しやすいアンケートに見直していきます。
取引先からの回答に対して上表の評価基準に基づいて評価を行い、全社に対してフィードバックを実施しています。特に、D評価の取引先および弊社が取り組み状況の確認が必要と判断した国内取引先の計14社と海外の一部の取引先に対しては、Web面談や書面での追加質問等を行い、状況について確認するとともに、サステナブル調達プログラムの趣旨や重要性について共有しています。確認の結果、取り組みが不十分だと思われた取引先には改善に取り組んでいただくよう要請し、いずれの取引先からも前向きなご回答をいただいています。国内と同様に海外取引先にも結果のフィードバックと取り組みが不十分と判断した取引先に改善を要請していきます。
今後の対応
2024年は個別に実施していた国内と海外の取り組みを統合し、「PASSION 2026」の目標に掲げたグループ全体の購買額の80%(原材料・副資材・製品については購買額の90%)をカバーする取引先へのアンケート体制を確立し、グループ全体でサプライチェーンの強靭化を目指します。
>サステナビリティ中期計画 Product サステナブル調達
②その他の調査
この他にも業種別での評価を一部実施しており、例えば国内の外部営業倉庫会社を対象に、新規選定と継続的評価の基準となる項目をまとめた「倉庫会社適格性評価リスト」を作成し、同リストに基づき、立地や設備、倉庫作業環境、社内教育の実施状況等について新規採用時および起用後に定期監査を行い、結果が合格基準に達しない場合は改善指導を行う等の取り組みも進めています。