視点の広がりを提供し、経営品質の向上に寄与
2020年から社外取締役を務めることとなりました。どの企業でも社外取締役については、メンバー構成における多様性の確保を重視し、それぞれの外部視点を活かした経営参画が図られています。クラレは今年から社外取締役を増員し、そうした多様な外部視点のポートフォリオミックスを一層拡充させており、私もその一端を担う立場として、期待に応えていく所存です。
私は、総合商社でグローバルビジネスにかかわる買収やリスク管理、人材活用などの業務経験を積み、経営企画部門の担当役員として、ESG経営やコーポレート・ガバナンス、コンプライアンス対応などにも携わってきました。また、コンシューマー製品を扱っていた経験を活かして、中間素材メーカーであるクラレに対して、『川下』 からの視点で、有用な助言もできると考えています。
「世のため人のため、他人のやれないことをやる」というクラレグループの企業文化には、独創性のある技術と開拓者精神、そしてESG経営につながる社会課題解決への姿勢が感じられます。オリジナリティの高い製品を数多く持ち、グローバルな拡大を遂げてきたクラレグループにとって、今後の課題は、こうした企業文化をグループ全体に浸透させ、内部統制や組織内コミュニケーションのための仕組みを作り上げていくことだと考えます。
グローバル化や持続可能な社会のために取り組むべき課題、デジタルトランスフォーメーションなど、企業を取り巻く常識が変化し続ける中で、経営判断にはますます幅広い視点が求められてくるでしょう。常に質の高い問いかけを心がけ、社内役員とは別の角度から光を当て、判断に立体感を持たせることで、経営品質の向上に寄与してまいります。
事業活動における多面的なリスクを抽出し、問題発生を防止
社外監査役の就任初年度は、米国子会社で発生した火災事故に関連する民事訴訟や、公正取引委員会より独占禁止法に基づく排除措置命令を受け、安全面・コンプライアンス面の問題が改めて顕在化し、内部統制の見直しが求められた1年でした。再発防止策などの対応が協議される中で、私は法律の専門知識を持つ立場から検証やヒアリングに携わりました。社外監査役として、こうした弁護士・会計士の経験を活かした監視や発言、また女性視点でのダイバーシティの推進なども期待されていると考えています。
当社の監査役会では、常勤監査役が出席した重要な社内会議に対する報告内容をもとにディスカッションを実施し、定期的に業務担当者を監査役会に招くことで問題点の認識や対応について確認しています。このような社内コミュニケーションや国内・海外拠点訪問による監査を通じて、事業活動における多面的なリスクを抽出し、内部監査部門や監査法人と連携しながら問題の発生を未然に防ぐことが監査役の果たすべき重要な役割のひとつであると考えています。
今後、当社が海外展開を加速していく上で、それに伴う新たなリスクへの対応を含むグローバルなリスク管理体制の確立が求められてきます。さらに、環境問題によって経営がどのような制約を受け、あるいはどのような貢献を果たしていくのかという点も、これからの重要なテーマです。こうした取り組みを持続的成長につなげ、真のグローバル企業を実現してほしいと思います。