環境報告

【ご注意】会計年度変更に伴い、本レポートにおける環境関連データはグラフも含め次の通りとなっています。

  • ・2013年度以前:4月-3月の12ヶ月実績
  • ・2014年度 :4月-12月の9ヶ月実績+2014年1月-3月実績(または推定値)(2013年度と重複しています)
  • ・2015年度以降:1月-12月の12ヶ月実績

環境リスクの低減

化学物質の排出管理

国内クラレグループでは化学物質排出把握管理促進法(PRTR法)に従って対象となる化学物質の年間排出量を調査・把握し、国に報告しています。また、クラレグループではPRTR法の対象物質以外に日本化学工業協会(日化協)が定める化学物質についても同様に排出量を把握してクラレHP等で公表しています。この他に残留性有機汚染物質(POPs)、揮発性有機化合物(VOC)、有害大気汚染物質(HAP)、粒子状物質(PM)が化学物質として考えられますが、クラレにおいては下表の通り対応しています。
環境データ

区分 物質名 対応
POPs ポリ塩化ビフェニル(PCB) PCB特措法(2027年無害化処理期限)に従って、保管・管理、報告、無害化処理中
ダイオキシン類 事業所ごとに排出量測定(環境データ参照)
上記以外 製造・使用していない
VOC
HAP
PRTR物質に含まれるため、PRTR物質として排出量を測定、報告
(マテリアルフローで報告、事業所ごとの排出量は環境データ参照)
PM ばいじん排出量をマテリアルフローで報告
PRTR 法対象物質および日化協の対象物質について排出量を測定、報告
(マテリアルフローで報告、事業所ごとの排出量は環境データ参照)

国内クラレグループは化学物質の排出削減のために2000年台初頭までに大規模な設備投資を行い、1999年に比べて約80%の排出量削減を実現してきました。その中で現在は生産規模が拡大しても事業所外への環境負荷を基準年よりも増加させない、という考え方で、環境中期計画に「日化協PRTR物質排出量を2016年度実績値未満に管理」するとの目標を定めています。この目標を達成するため、生産設備の増設などの場合も、現状よりも排出量を増加させないための対策も投資案件に含めて検討・実施しています。2019年度の排出量は国内クラレグループ全体で967トンでした(大気886トン、水域81トン)。その結果、2018年度対比では減少していますが、目標としている2016年度実績値(957トン未満)には届いていません。今後も引き続き、事業所外への環境負荷を増加させないように対策を進めていきます。

海外クラレグループについては、各生産拠点が立地する国の環境規制を順守すること、を年度方針としています。ここ数年はM&Aによる事業編入、および、製造拠点の稼働率上昇等により昨年度まで増加傾向にありましたが、2019年度の排出量は449トンとなりました。
※PRTR法対象物質および日化協指定物質

廃棄物の有効利用

国内クラレグループでは、「廃棄物の有効利用率95%以上、最終埋立処分率0.5%以下」を2011年度以降継続していますが、2019年度も有効利用率96.8%、最終埋立処分率0.40%とこの状況を維持しました。国内クラレグループの廃棄物発生量は2018年度対比でやや増加しましたが、各事業所、関係会社では製品収率の向上や廃棄物の分別、回収による再原料化など、廃棄物発生量を減らすための地道な努力を続けた結果、2019年度は削減対策量2,030トンとなり、2016年度発生量の1%相当分(900トン)以上の削減対策目標を達成しました。また、発生した廃棄物は、ほとんどを再資源化、エネルギー回収することで有効利用し、外部環境への負荷を増大させないように配慮しています。一方で、2019年度の埋立処分量は365トンと前年度対比でやや増加し、目標である2016年度実績値(251トン未満)には届いていません。今後も引き続き、廃棄物発生量の削減対策、および、発生した廃棄物の有効利用を進めていきます。

また、海外クラレグループの廃棄物発生量は2018年度対比でやや増加しました。これは、トラブルで生産停止していた製造拠点の再稼働によるものであり、各生産拠点では自国の法的要求事項を遵守するとともに、収率向上、原単位改善活動を進めており、今後も運転条件の最適化や再原料化などの削減対策に引き続き取り組んでいきます。

水資源の有効利用

クラレグループでは海外関係会社も含め、水資源が乏しく事業活動が水源に大きな影響を及ぼすような地域での生産活動は行っていませんが、水資源は世界的に需給が逼迫しており、今後も引き続き大切な資源であると認識し事業活動を進めています。

国内クラレグループの取水量(海水を除く)は71.9百万m3でした。一部事業所では、温排水の熱回収や冷却水のボイラー用水への再利用等の“水のリユース”を継続して行っています。

国内クラレグループでは、各事業所が水資源に恵まれた立地条件にはあるものの、地球温暖化に伴う気候変動の影響による渇水リスクなど長期的な水供給の見通しを考慮しながら事業活動を進めていく必要があると考えています。特に、倉敷事業所では高梁川流域の洪水対策工事の影響で、河川水の取水ができなくなるため、倉敷市が供給する工業用水への切り替えを進めています。今後も引き続き節水と水資源の有効利用に努めながら使用量のトレンドを追跡していきます。

また、海外クラレグループでは2014年度以降、水使用量が増加しています。これは、ポバール樹脂原料製造の内製化、カルゴンカーボン社などM&Aによる事業編入等によるものです。2019年度の水使用量は前年度とほぼ同じですが、水(海水除く)原単位指数は前年度比▲5.4%となり、目標を下回る結果となりました。これはエネルギー原単位指数が減少した要因と同様、一部拠点における換算生産量の減少が大きく影響しています。

生物多様性の保全

クラレグループでは地球温暖化対策、化学物質の排出管理、廃棄物の有効利用、水資源の有効利用を継続して行うことが生物多様性の保全につながると考えています。また「生物多様性の保全に係る活動方針」を制定し、生物多様性保全に貢献する活動、および、技術開発・製品販売を進めています。例として、クラレの一部事業所では、自治体他と連携した森林保全活動や絶滅危惧種の保護などに取り組んでいます。また、クラレの製品として、バラスト水管理システム<マイクロフェード>の型式承認を日本国政府から取得(2012年5月30日付)し、販売を進めています。2017年に「船舶バラスト水規制管理条約」が発効し、外航船舶に対してバラスト水管理装置の順次搭載が義務化されました。当社の<マイクロフェード>によりバラスト水の浄化が可能となるため、生物多様性保全に貢献する製品として期待されています。

※船舶が積載物を降ろした後のバランスを保つための重しとしてバラストタンクに積み込む海水。採取した国とは異なる国で排出された場合、排出した海水に含まれる水中生物が、本来の生息地と異なる場所で繁殖することによる生態系への影響が国際的な問題となっています。

環境保全活動例

倉敷事業所
  • 事業所内に「小鳥の森」と称するエリアを確保し、野鳥が住める環境を維持。
  • 玉島の溜川公園清掃活動。(溜川公園には絶滅危惧種のダルマガエルが生息している。)
  • 瀬戸内海環境保全特別措置法を順守し、適切な排水管理を実施。
岡山事業所
  • 岡山県主催の児島湾清掃活動
  • 岡山理科大付属高校のクラレ水源地における魚道テストへの協力。(旭川の絶滅危惧種二ホンウナギの資源保護を目的とする。)
西条事業所
  • 愛媛県環境保全協会、西条市地下水保全協会に参画
新潟事業所
  • 新潟県が推進する「企業の森づくり」に参加。
  • 胎内市福祉協議会が主催する清掃活動に参加。
労働組合との共催
  • 富士山植樹活動
クラレアメリカ
  • NPOテキサス保全基金Texas Conservation Fund (TCF)を支援し、地元水路の清掃に参加。
エバールヨーロッパ
  • 「Operation Clean Sweep」ボランティアプログラムに参加。(プラスチックペレットの水系環境への流出による海洋ごみを防ぐために運営されている)