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人材戦略

クラレグループは、様々な国籍・背景を持つ人材でなりたち、長期的・持続的な企業価値向上のためには、それら多様な社員一人ひとりの活躍が欠かせません。そのため当社の人材戦略は、創業以来の基本精神である<私たちの使命><私たちの信条>に基づき、価値創造の源泉である多様な人材が、全社横断的なつながりを持って活躍できることを狙いとしています。魅力ある文化を磨き(「1.文化」)、その文化に惹かれる人材を獲得してつながりを作り(「2.人材獲得と配置」)、その人材を動機づけ、育成をします(「3.人材育成」)。

<人材戦略のストーリー>
 「1.文化」では、<私たちの使命><私たちの信条>の実現を目指し、社員一人ひとりが可能性を追い求めて挑戦する文化を推進します。そのため、クラレが創業当時から持っている個人の可能性を引き出すリーダーシップを大切にし、また時代や環境の変化に応じた職場や働き方を整備します。

「2.人材獲得と配置」では、使命・信条に共鳴し、我々の文化に魅力を感じる人材を獲得し、多様なメンバーとつながりを持つことでグループ力を最大化する配置を行います。

「3.人材育成」では、使命・信条を実現するため、現場力や専門性を高める教育と並行し、個々のキャリア支援、将来の経営者育成により企業価値の最大化と継続的なグループの成長を実現します。

また変化する経営環境や事業ニーズを的確に人材戦略へ反映させるため、経営層や事業との連携にも力を入れています。取締役会や経営会議とは別に、経営会議メンバーと人事部門で構成する「人事委員会」を年12回(2024年)開催し、重要な人材配置や育成、人事施策の協議を行っています。その他、事業部長との「意見交換会」や、各事業部の重要なポジションに対する後継者育成計画のための「人材会議」を、毎年グローバルに実施しています。

「1.文化」に関する取り組み

社員が健康で安心して働ける職場環境を整える「健康経営」はもちろん、時代に即した就業規則や人事制度を整備しています。また魅力ある職場、クラレならではの文化推進のため、以下のような取り組みを行っています。

(a)人権尊重への取り組み
 クラレグループのグローバルな事業活動において、私たちが品格と敬意をもって全てのステークホルダーの人権を尊重するための基礎とするものとして、「クラレグループ人権方針」を2024年度に制定しました。
 クラレグループでは人権の尊重について、「クラレグループ行動規範」にて事業活動に関わるすべての人の人権を擁護し、一人ひとりの尊厳と価値を尊重することを掲げています。「クラレグループ人権方針」は人権の尊重をより具体的に明文化することで、クラレグループのすべての人が各々の行動に反映していくことを目指し「世界人権宣言」や「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」等の国際的に認められた人権に関する規範に基づき制定されました。私たちは人権の尊重を企業における責任の中核をなす要素と考え、真摯に人権尊重の取り組みを実践していきます。

(b)グローバル人事ポリシー
 クラレグループでは、人材に関する基本的な考え方をまとめた「グローバル人事ポリシー」に基づいて、社員一人ひとりが仕事を通じて人間的に成長できるよう、多様性の推進、人材育成、公平・公正な評価などの制度を整えるとともに、健全な組織風土の醸成と雇用機会の創出に取り組んでいます。

(c)エンゲージメントサーベイ
 クラレグループでは、従来グループ会社個別に行っていたサーベイを統一し、2022年からグローバルエンゲージメントサーベイ「Our Voice」を毎年1回実施しています。エンゲージメントを「従業員と会社の方向性が共鳴し、互いに貢献したいと思える関係」と捉え、会社の信条の浸透、上司や経営陣への信頼、仕事のやりがいなどの状況を確認しています。結果は経営層や所属長を含む全社員に共有し、部署運営やより良いコミュニケーションに生かすことでエンゲージメントの向上と組織の活性化を図ります。

(d)ダイバーシティとインクルージョンに関する意識の醸成
 クラレグループでは、多様なメンバーと切磋琢磨できる職場環境の醸成と、個人の可能性を引き出すリーダーシップの推進を目的として「クラレグループダイバーシティとインクルージョンに関する基本原則」を定め、目指す組織像を示すとともに、関連する施策を実施しています。各職場での多様性の進展を確認するため、国内における中核人材の多様性を指標にしています(指標:中核人材の多様性確保)。

ダイバーシティとインクルージョンの考えを組織運営に反映するため、2024年は海外を含む事業部長・本部長以上にインクルーシブ・リーダーシップ研修を実施し、各自は行動変容のために策定した計画を実行しています。

2025年は対象を広げ、部長層を対象とした研修をグローバルに実施し、組織をリードしていくために必要な気づきや手法を得てもらうことを目指します。またクラレグループ全社員へダイバーシティとインクルージョンの理解を深めるための、多様な社員へのインタビューと社長からのメッセージで構成した動画を発信します。

(e) 職場の多様性と柔軟な働き方の推進
 多様な人材が協働することが新しいアイディアやイノベーションの創出に繋がるという考えから、国内においては女性社員が活躍できる環境作りに取り組んでいます。その基盤作りとして新卒採用における女性の割合を職場環境の多様性の進捗を測る指標としています(指標:新卒採用に占める女性の割合)。

これまでフレックスタイム制度の条件付きコアレス化や在宅勤務制度の対象者を全社員へ拡大、兼業承認の取り扱いを見直すなど、柔軟な働き方の推進に取り組んできました。また、家庭事情や自己啓発などの理由を含め必要な時に休暇を取得できることが、社員の幸福や会社への愛着を生み、またそのような働き方支援をできる体制とすることで安定的な部署運営が期待されます。その体制作りを推進するために、男性の育児休業取得に関する指標を設定しています(指標:男性の育児休業取得に関する指標)。

「2.人材獲得と配置」に関する取り組み

人材獲得は益々重要になり、採用体制や処遇、福利制度等の強化策を進めています。またグループ内の拠点間のつながりを促進する中長期的な取り組みとして以下を実施しています。

(a)機動的な駐在制度(グローバルモビリティの推進)
 既存の駐在制度では費用面での問題や、家庭事情などにより非日本人社員への機会が限定的でした。より機動的に、またグループ内の多様性を高めるため、「半年から1年未満の短期駐在員制度」を実施しています。日本から海外だけでなく、海外から日本や海外間でグローバルに人材が交流する施策を強化していきます。

(b)グローバルでの後継者育成計画
 グローバルに社員一人ひとりの特性を生かしつつまた事業ニーズに対応するため、グループで一貫した人事基盤が必要です。グローバル共通の仕組みと人材データベースを構築し、従来グループ会社別に実施していた後継者育成計画をグローバルに行えるように整備を進めています。
 2024年は各事業で部長ポストを対象にした後継者育成計画を初めてグローバルに実施し、後継者の準備状況の確認や人材の育成計画について人材会議で議論する仕組みを導入しました。今後、この仕組みを生かした戦略的な採用や組織をまたぐ人材配置につなげていきます。

「3.人材育成」に関する取り組み

現場力強化のための職場での教育や研修の組み合わせによる人材育成を進めています。国内では、自律的に自分のキャリアを考えるための研修にも力をいれています。戦略的に進めているグローバル人材育成として以下があります。

(a)グローバル人材育成プログラム
 クラレグループでは、世界を舞台に活躍できる人材を国内外で育成することを目的に、2007年より「グローバル人材育成プログラム」を実施し、2024年までに国内外から約1,200名が受講しています。なかでも課長層を対象にグローバルリーダーシップ開発を目的としたGTT(Global Team Training)はこれまでに22回開催・受講者が約430名に達し、研修卒業生間のネットワークは、グループ内での国境を超えたコミュニケーションの促進に大きく貢献しています。言語や文化が異なるメンバーと働くことができるリーダー層の育成状況を示す指標として、部長層のグローバルリーダー研修の受講率を設定しています。

(b)経営幹部候補育成
 計画的に経営幹部候補を育成し人材プールを形成すること、それにより中長期的な事業運営に資することを目的として、経営幹部候補育成プログラム「Kuraray Leadership Program」を実施しています。受講生は部長層、課長層からそれぞれ、多様性(職種、国籍、性別など)も踏まえて選抜し、部長層は2年間、課長層は3年間のプログラムを受講します。
 毎年、社長を含めた経営メンバーで各受講者の育成計画・状況を確認しながら、経営者視点の獲得や視野拡大を目的として、「未経験分野への異動などのタフアサインメント」「社内外の経営幹部との定期的な対話」「社外経営幹部育成プログラムへの派遣」等のプログラムを実施しています。事業部長・本部長候補の準備率として当プログラムの受講者数を使用しています。

(c)DX人材育成プログラム
 クラレグループでは、全社員がデジタルの進化に常に適応し続ける風土、環境をつくり上げることが重要であると考え、2023年よりDX人材育成プログラムをグローバル施策として開始しました。Gold、Silver、Bronzeの3段階のデジタルリテラシーレベルを設け、それぞれに対応した育成カリキュラムを整備しています。まずは全社員が基礎的なデジタルリテラシーレベルの水準であるBronze classを習得することを目指します。また、各部門には少なくとも1人ずつ、DXをリードする人材を育成・配置し、その知識を部門全体へ、最終的には会社の隅々にまで広げていきます。