コーポレート・ガバナンス

「第二、第三の柱」を確立していくために外部との接触を通じて成長を促進

私は、社外取締役として「自分がクラレの社長だったらどう判断するか?」「クラレの常識が世の中の非常識になっていないか?」という観点から経営をチェックすることをポリシーとしています。そして「クラレに欠けているものは何か?」を常に考えながら、社内への働きかけに努めています。

技術と市場の変化が激しい情報通信業界を経験してきた私から見ると、クラレは社内の一体感を大切にし、その中で技術者を育て、時間をかけて独自の製品を生み出してきた企業です。しかし、今後の成長課題であるビニルアセテート事業に次ぐ「第二、第三の柱」となる事業をスピード感をもって確立していくためには、異業種との交流やオープンイノベーション志向の開発など、外部との接触を通じて自社に足りないものを補うことが必要だと感じます。

クラレの取締役会は、こうした私からの意見も含めて社外取締役・社外監査役からの発言が多く、自由闊達で開かれた討議の場になっています。また、株主総会における質疑応答など、株主の皆様とのコミュニケーション姿勢やリレーションシップにも積極的な姿勢がうかがえます。引き続きクラレの一員として、企業価値の向上に寄与してまいります。

海外子会社の法的リスク対応を図りグローバル企業としての成長・発展へ

社外監査役の役割は、外部視点から経営の監視を行う点で社外取締役と共通していますが、取締役会への出席のみならず、常勤監査役と日常的に意見交換し、連携して国内・海外拠点への往査やヒアリングを行うなど、業務内容は大きく異なります。クラレの常勤監査役に就任される方の多くは、それまで事業部で重要な役職を担って きており、経営課題への理解が深く的確です。それを社外監査役が他業種・他業界での経験等から補完する形で監査役会が機能しています。

私自身は労働法を専門とする弁護士ですので、その方面の企業課題への対応経験や、外資系クライアントにかかわる中で間近に見てきたグローバルガバナンスの構築・運用に関する知識などを、クラレでの監査業務や経営諮問会議に活かしています。

監査業務を通じて、クラレグループに対しては真面目かつクリーンで風通しのよい企業集団という印象を持っていましたが、独占禁止法違反が起こりました。監査役会では独禁法順守の徹底を監査における最重要項目の1つとし、重点的にモニタリングしており、全社を挙げて進めている再発防止策については、真摯に取り組まれていると評価しています。

また、今後は世界的に取り締まりが厳しくなっている腐敗防止・贈収賄防止をはじめとする海外拠点におけるコンプライアンスリスクも重要性が高まってきます。

こうした対応をさらに推し進め、真のグローバル企業として健全な成長・発展を期待しています。