安全に関する考え方
クラレグループの事業活動において、「安全」はすべての礎となる絶対条件です。「安心して働ける会社、事故や災害が起こらない安全な会社」の実現は、製品の安定供給を維持するためにも、社会から信頼され続けるためにも必要な重要テーマと言えます。
そうした考えのもと、クラレグループは安全のマネジメントシステムを構築・運用し、様々な活動を行っています。社員の安全意識を高め、仕事をする上での「当たり前」のこととして安全行動・確認を定着させるために、さまざまな取り組みを推進しています。
各現場では、リスクアセスメント活動を通して保安防災・労働安全リスクを発見し、設備の本質的な安全対策を進め、その発生防止を図っています。また万が一、事故・災害が発生した場合に備え、被害を最小限に抑えるための訓練や事故の事例、教訓などの情報共有化により再発防止に努めています。
- 安全に関する行動原則
- 『安全はすべての礎』
- 安全に関する行動方針(2018年度)
- 「安全第一、生産(工事、開発)第二」を徹底すること
- 行動前に一呼吸おいて「確認」を行うこと
- 全員が自らの責任として無事故・無災害を目指し、行動すること
安全活動マネジメント
「安全活動マネジメント規定」に基づき、年度ごとに計画を立て、保安防災・労働安全に取り組んでいます。具体的には、社長および担当役員が出席する安全推進会議で、当年度の安全活動実績の総括評価と次年度の活動方針策定を行い、その方針を各事業所・部署の活動計画に反映させ、実行しています。計画立案と活動の状況、その成果については、担当役員を含む本社安全スタッフが各事業所の現場を年2回訪問し、検証を行っています。
国内クラレグループでは、保安管理レベルの更なる向上を目指す重点活動として、停電や緊急停止などの非定常時におけるリスクアセスメントを推進し、潜在リスクの発掘と対応を図っています。また若い世代への運転・技術の継承にも計画的に取り組んでいます。今後さらに外部機関による安全基盤と安全文化の評価を通じて、より強化すべきポイントを把握し、PDCAを回すことで、事故や災害の起こらない安全な会社をめざしていきます。
一方、海外関係会社に対しては、発生した事故・災害やその対策に関する情報を共有する体制を構築する等、安全活動基盤のグローバルな整備を進めてきました。2018年から予定している環境安全部門のグローバルミーティングや、安全活動マネジメントシステムのグローバル展開の準備を進めており、今後は、これらの活動を通じてグループ全体の安全水準の向上を目指して取り組んでいきます。
保安防災・労働安全の安全重点活動
評価 ○:達成 △:さらに取り組みが必要 ×:未達
2017年度 | 2018年度活動項目 | |||
目標 | 実績 | 評価 | ||
保安防災 労働安全 |
個人の安全意識の向上 (咄嗟時の不用意な危険行動防止) |
作業後の振り返りや問いかけ指導、部署間交流など、特徴ある活動が活性化し、安全意識の向上が図れた。 | ○ |
|
---|---|---|---|---|
非定常リスクアセスメントの推進 | 想定通り進まなかった場合や、停電、緊急停止などの一歩踏み込んだリスクの抽出とその対応検討が進捗した。 | ○ | ||
重大リスクには本質安全化 または被害極小化の対策 |
各部署の工夫を凝らした取り組みが進み、本質安全化または被害極小化の対策が進捗した。 | ○ | ||
異常の兆候検知と異常時対応能力の向上(経験を積ませ技術力向上) | 夜間休日、設備故障、職場長の不在などを想定した訓練の充実により対応能力の向上が図れた。また、異常の判断基準を明確化すると共に、危険感受性を高める教育にも取り組み、兆候検知の能力向上も図れた。 | ○ | ||
安全活動マネジメントのグローバル展開に向けた基盤整備 | 国内外で共通化した労働災害評価システムや表彰基準等の本格運用を始めると共に、事故情報等の共有化を進め、グローバル展開に向けた基盤整備が進捗した。 | ○ |
保安防災・労働安全の数値目標と実績
2017年 | 2018年 | |||||
目標 | 評価基準 | 実績 | 目標 | 評価基準 | ||
保安 防災 |
国内 | 無事故 | 保安事故1件以下 | 3 | 無事故 | 保安事故0件 |
---|---|---|---|---|---|---|
海外 | - | 2 | 保安事故0件 | |||
労働 安全 |
国内 | 無災害 | A、Bランク2件以下※1 | 1 | 無災害 | A、Bランク0件※1 |
海外 | - | 0 | A、Bランク0件※1 | |||
国内 | 全労働災害度数率0.8以下※2 | 0.95 | 全労働災害度数率0.5以下※2 | |||
海外 | - | 5.27 | 全労働災害度数率3.0以下※2 |
※1 A、Bランク:当社独自の指標による労働災害評価ランクで、労働災害の深刻度を潜在的な障害程度と災害発生要因の不具合の度合いによりA、B、C、Dの4つにランク付けしている。A、Bランクは深刻な災害に位置づけられる。
※2 全労働災害度数率:医療処置を要する労働災害の労働時間百万時間当りの発生件数を表す。
保安防災
クラレグループでは、社会に対して甚大な影響を与える爆発、火災、有害物質の漏洩などの事故の未然防止を図ること、そして万が一事故が発生した際の被害を極小化することを重要な責任と考えています。そのため、保安防災に関するリスクアセスメントに継続的に取り組み、建築物・プラントの地震対策や津波対策、設備の保安管理システムの整備などの保安防災活動を推進しています。
特に、近年発生した他社の事故を契機にして、運転立上げや停止、停電、断水、緊急停止といった非定常時のリスクアセスメントに注力しています。更に一歩踏み込み、安全装置が故障した場合、ルールが守られない場合なども対象として、様々なリスクを抽出し、その対応策の検討を進めています。
合わせて、異常の兆候検知のための危険感受性の教育や異常の判断基準の明確化にも取り組み、異常に対して迅速に対応し、事故に至る前に対処できる工夫や人材の育成に取り組んでいます。
また、万が一に備え、夜間休日、職場長の不在などを想定した訓練、無警告での訓練、外部の施設を利用した訓練、地域消防との共同訓練など、緊急時に対する様々な現場訓練を定期的に実施しています。
重大な事故が発生した場合には、社長をトップとする緊急対策本部を設け、速やかな対処・現場への支援ができる体制も整えています。2017年度は、社長不在時に事業所で火災が発生し、近隣住民へ屋内退避を依頼する事態を想定して全社の緊急対策本部訓練を行いました。事故の際、地域・マスコミに適切な情報を提供できるよう、対外的な広報の場に立つ主要管理者を対象にメディアトレーニングも行なっています。
2017年度には、残念ながら国内では屋内でのオイル漏洩が1件と空調設備等からのフロンガス漏洩が2件、海外ではメンテナンス中の設備の小規模な爆発と廃棄物コンテナの火災が各1件、国内外で合計5件の事故が発生しましたが、外部への影響や人的被害はありませんでした。2018年度以降も、引き続き保安防災活動に取り組み、事故の防止に努めていきます。
労働安全
クラレグループでは、社員の安全と健康の確保こそが企業活動の基本と認識し、労働安全マネジメントシステムの適切な運用を通じて、組織および社員一人ひとりの安全レベルの向上に努め、安全で災害のない職場を目指しています。
安全に関する行動原則、行動方針をはじめとする全社の方針や活動項目などを基にして、各事業所・部署の特徴に合わせた方針・計画を立て、これに沿って部署毎に工夫を凝らして活動しています。安全活動の状況やその課題について、国内の各事業所・工場等で毎月開催される安全衛生委員会の中で労使一体となって討議し、「安心して働ける会社、事故や災害が起こらない安全な会社」の実現に向けて取り組んでいます。
リスクアセスメント活動や設備の本質的な安全対策を通して、設備の不備による災害を減らす活動が進み、重篤な労働災害は減少してきました。しかし、個人の不注意や無意識の行動に起因する労働災害はまだ多く発生しています。この様な災害を無くすため危険への感度を高める教育を推進しています。
2017年度は国内クラレグループの全労働災害度数率が0.95、海外関係会社は5.27となりました。
国内クラレグループでは、労働災害の分析を適切に行うため、当社独自の指標を用いて労働災害のランク付けを行っています。2017年度からは、海外関係会社の労働災害にも適用を開始しました。これにより国内外の労働災害の同一の指標での評価が可能となり、2018年度からは安全目標の評価基準として利用しています。
労働災害評価
労働災害の分類の指標として、一般的には実際の傷害の程度による分類(死亡災害、休業災害、不休業災害など)が用いられています。その中でも休業災害を基にした度数率が組織の安全レベルの評価や組織の安全の目標としてよく用いられます。しかし、この評価方法では、以下のような点から実際の安全レベルと乖離する場合があるのが実状です。
- ①傷害の程度は「偶然」に左右されやすい。
- ②災害の発生要因が考慮されない。
- ③(グローバルな管理に使用する場合)国柄により傷害程度の判断が異なる。
そこで、当社独自の指標として、「偶然」の要素を除き、発生要因の評価を加えた新しい労働災害評価ランクを設定しました。実際に起きた傷害程度ではなく、労災が発生した事象に対して、それにより潜在的に起こり得た傷害程度を数値化しています。更に、災害発生要因の不具合の度合いを、人的、設備的、管理的要因に分けて点数化し、潜在的な傷害程度に加えることにより、A、B、C、Dの4段階にランク付けしています。
その結果、深刻と判断されるAランクとBランクの労働災害の発生件数を、その組織の安全レベルを評価する指標として利用可能になりました。
Focus:危険体感訓練を取り入れた「安全体感教室」
生産現場での災害や異常の実体験が少ない中で社員の危険への感度を向上させるためには、実地で危険に対する感受性や知識を高める体感教育が有効です。クラレグループでは、2015年に危険体感設備を岡山事業所に設置して「安全体感教室」を実施しています。
ローラーへの巻き込まれ、安全帯からのぶら下がり、回転体への袖口の巻き込まれといった危険事象を模擬的に体験するもので、危険に対する机上の学習や議論では得られない認識を社員にもたらします。
国内クラレグループでは、岡山事業所に続いて2017年から西条事業所でも「安全体感教室」を開始し、倉敷事業所への導入も進めています。また、専門業者を招いての訓練や外部の訓練施設も活用しています。
物流安全
クラレは物流事故による社会的被害を防止するため、製品の輸送、保管面での物流安全確保の活動を継続して実施しています。
この活動の中心となるクラレ物流安全協議会は17年目を迎え、2017年度は大学特任教授を招いて「製造現場の安全管理」についての講演会を開催し、また新潟事業所にて危険物の受入れ作業の実地検証等を行い、参加各社(危険物輸送委託会社10社)と 重大事故防止の施策を共有しながら、物流安全についての意識向上を図りました。